2021年10月18日
二十四節季と七十二候の話
すっかり夏の気配は遠のき、季節は寒露から霜降へ。
寒露の末候は「きりぎりす、戸にあり」。
昔は蟋蟀(コオロギ)と書いて、キリギリスと読み、秋に鳴く虫の総称としていたそうです。以前にも書いたことがありますが、虫の声が音楽のように聴こえる国民は世界でもそう多くないのだとか。ともすれば「虫の音色」を楽しむ余裕をなくしがちの毎日ですが、せっかくそう聴こえる耳をご先祖様から受け継いだのですから、大切にしたいものです。
そして、第五十二候「霜はじめて降る」。農家さんと野菜にとっては冬モードに突入する合図。秋になり空気が乾燥することでかえって甘くおいしい実がとれていた自家用のミニトマトも、霜が降りたとたん、一気に枯れ、土に還っていきます。
ときどき降る小雨が一雨ごとに冬の寒気を連れてくるようになり、畑の冬野菜が次第に大きく育ちはじめます。
店主のつぶやき
かこさとしの「ならの大仏さま」は大仏がなぜできたか、どのように作られたのか、そしてどのようにして現代まで守られてきたのかを科学的知識と丁寧な歴史的検証をもとに描いた絵本。
時の権力者たちの争いの中、三度も焼け落ちながら、そのたびに日本中の人々からの寄進、あまたの大工や職人の努力で 1300 年にわたって受け継がれてきた様子が一大絵巻となって描かれています。
「利害や欲望に誤りやすい人間が、迷いや悩みをすこしずつのりこえてきたことをしめす」のが奈良の大仏様であり、これからの道しるべにしてほしい、と、かこさんは結んでいます。
こんなに感動する科学絵本はほかにない、と思う一冊です。

